易経 · 六十四卦

周易・易経 第39卦「蹇」水山蹇、坎上艮下

蹇。西南は利、東北は不利。大人に会うのがよい。正しさを守れば吉。

『彖伝』にいう。蹇は困難であり、前方に危険がある。危険を見て止まることができるのは、なんと知恵あることか。「西南は利」とは、進めば中を得るからである。「東北は不利」とは、その道が尽きるからである。「大人に会うのがよい」とは、進めば功を立てるからである。正しい位にあり、正道を守れば吉で、国を正すことができる。蹇の時における働きは、なんと大きいことか。

『象伝』にいう。山上に水があるのが蹇である。君子はこれを見て自らを省み、徳を修める。

易経 第 39 卦の本卦・互卦・錯卦・綜卦の図

易経 第 39 卦 原文と概説

周易第三十九卦の詳しい解説
蹇卦の原文
蹇。西南は利、東北は不利。大人に会うのがよい。正しさを守れば吉。
『象伝』にいう。山上に水があるのが蹇である。君子はこれを見て自らを省み、徳を修める。
現代語による説明
蹇卦。占ってこの卦を得たなら、西南へ行くのはよく、東北へ行くのはよくない。貴族や王公に会うのがよく、吉兆を得る。
『象伝』はいう。上卦は水を表す坎、下卦は山を表す艮である。山石はごつごつし、水の流れは曲がりくねる。これが蹇の卦象である。君子はこの卦象を見て道を行う難しさを悟り、自らに原因を求め、徳を修める。
『断易天機』による解説
蹇卦は坎上艮下で、兌宮四世卦である。西南へ行くのに利があり、東北へ行くのは不利。また大人に会うのがよい。
北宋の易学者・邵雍の解釈
一歩ごとに進みにくく、苦難が重なる。進退きわまりない時は、耐えて時を待つ。
この卦を得た人は心身ともに苦しみ、歩むのも困難である。正道を守り、軽率に動いてはならない。危険な境遇に入れば災いに遭う。
台湾の国学大家・傅佩栄の解釈
時運。困難な時にあるので、いっそう努力すること。
財運。金銭が流通せず、利益を得にくい。
住まい。水による損害に注意。婚姻には悔いがある。
身体。足に病気がある。注意して養生すること。
伝統的な卦の解釈
この卦は異なる卦(下が艮、上が坎)の重なりである。坎は水、艮は山。高い山と深い水は、困難が重なり、人生に険阻があることを表す。危険を見て止まり、身を守るのは知恵である。蹇は歩行が困難なことを意味する。
大象。前方は険しく、後ろには高い山がある。進退きわまり、足の不自由な人が一歩一歩苦労するようである。
運勢。災難と困難が多く、進むも退くも難しい。この時は正道を守り、軽挙妄動してはならない。動けばかえって災いを招く。
事業。何事も初めは難しいが、続ければよい結果が出る。人生は容易でないので、まず自らに助けを求め、徳性を養うこと。志を高く持ち、自信をもって勇敢に進む。困難に遭ったら友人の助けを求め、危険な行動は避ける。柔をもって剛に勝ち、機会と時を待ち、力に応じて行動する。
商売。事業は段階的に進め、危険を冒して行えば自ら苦しみを招く。商道徳を強め、他人と誠実に協力する。困窮した時も、危機にある人を見捨てず、身を投じて助ける。共同で行動すれば市場競争の中で活躍できる。
名声を求める場合。順序を踏んで進み、自身の修養を強める。静かに動きを観察し、変化を待って機を見て行動し、進める時に進む。心を平らかに保ち、名利を追って危険を冒してはならない。賢能な人と結び、高徳の人に従えば、必ず危機を安全へ転じられる。
婚愛。あまり順調ではない。焦らず、慎重に選ぶこと。ただし自分をよく知る必要がある。
決断。困難で不利だが、試練と見ることができる。自信を満たして前進し、自ら苦しみを招かない。賢者と交わり、互いに助け合い、中正の道を守れば、難を吉に変え、善い結果を得られる。

第三十九卦の哲学的意味

蹇卦は異なる卦の重なりで、下卦が艮、上卦が坎である。坎は水、艮は山。高い山と深い水は困難が重なり、人生に険阻があることを表す。危険を見て止まり、身を守るのは知恵である。
蹇は歩くのが困難なことを意味する。蹇卦は睽卦の後に位置し、『序卦伝』は「乖離すれば必ず難がある。ゆえにこれを受けるに蹇をもってする。蹇とは難である」と説く。睽の離反の後には、必ず困難と険阻が現れる。それが蹇卦の意味である。
『象伝』はこの卦をこう解説する。山上に水があるのが蹇である。君子は自らを省み、徳を修める。
『象伝』は、蹇卦の卦象は下が坎(水)、上が艮(山)で、高山に水がたまっている姿だと示す。これは困難と険阻、行動の難しさを象徴する。このような状況に直面した君子は、よく自らを反省し、徳の修養を高め、自身の努力によって窮境を乗り越えるべきである。
蹇卦は困難に陥り、前進できないことを象徴し、下下卦に属する。『象伝』はこの卦をこう断じる。大雨が大地を覆い、雪が空を満たす。道行く人は苦しみ寒さに耐え、泥水を引きずって力を使い果たす。事は思い通りにならないが、辛抱して耐えよ。

易経 第 39 卦 爻ごとの詳解

周易第三十九卦・初九爻の詳しい解説
初六の爻辞
初六。進めば蹇、戻れば誉れ。
『象伝』にいう。進めば蹇、戻れば誉れ。待つのがよい。
現代語による説明
初六。外へ出れば困難だが、帰れば安らかである。
『象伝』はいう。外へ出れば困難だが、帰れば安らかである。難を知って退き、座して時機を待て。
北宋の易学者・邵雍の解釈
平。これを得た人は、旧来のものを守り、平常を保つのがよい。官吏は着実に進めば、幸運が近づく。
台湾の国学大家・傅佩栄の解釈
時運。一時退いて、幸運を待つ。
財運。危険を冒さず、元手を守るのがよい。
住まい。転居は不利。婚姻は待つのがよい。
身体。病気が起こり始めたばかりなので、退いて養生する。

初六の変卦
"周易第39卦的其中之一变卦卦的卦图

初六が変じて、周易の63卦「水火既済」となる。この卦は異なる卦(下が離、上が坎)の重なりである。坎は水、離は火。水と火が交わり、水が火の上にあってその勢いが火を抑え、消火の大功が成し遂げられた姿である。「既」はすでに、「済」は成就を意味する。既済とは事がすでに成就したが、最後には変化が起こるということである。

初九爻の哲学的意味

蹇卦第一爻。爻辞は「初六。進めば蹇、戻れば誉れ」。爻辞の解説。
往は進むこと。来は戻ること。
この爻辞の意味は、前進すれば危険な境地に入り、退けば称賛を得るということである。
初六の教えは、勢力が弱い時は危険を見て止まり、時機を待つべきだということである。
初六は蹇卦の始まりにあり、陰爻が低い位にいて、柔弱かつ不正位である。下卦の艮(止まる)の初めに位置し、前進すれば必ず上卦坎の険に陥るので「進めば蹇」となる。時を知って退き、危険を見て止まることができれば、称賛を得られる。
『象伝』はこの爻をこう説明する。「進めば蹇、戻れば誉れ。待つのがよい」。このような状況では、安心して機会を待ち、軽率に動かないのが最善だということである。
この爻を得た人は、前進が困難だと気づいたなら、一時戻って待つのが賢明な選択である。
象辞の意味は、進めば危険に遭い、戻れば栄誉があるということ。それは時機を待つべきだと示している。
初六は蹇卦の最下爻で、陰爻が奇数位にあるため不正位であり、険阻を越える力がない。初六は九四と応じ、九四は上卦坎の下爻、すなわち険の境目である。つまり初六には険を越える力はないが、先を見通す力が強く、危険の瀬戸際に達する前に危険を察して退く。この退却によって損失を減らし、自然に人々の称賛を受ける。現実にも、臆病な人には、危険を早く察知して未然に防ぎ、自分を損失から守れるという長所がある。
周易第三十九卦・九二爻の詳しい解説
六二の爻辞
六二。王の臣は困難を重ねて受けるが、自分のためではない。
『象伝』にいう。王の臣が困難を重ねるが、最後まで咎はない。
現代語による説明
六二。王の臣がたびたび困難に赴くのは、自分の私利のためではない。
『象伝』はいう。王の臣が公心から幾度も困難に赴くので、その身には終始過失がない。
北宋の易学者・邵雍の解釈
凶。これを得た人は困難や危険に遭い、企てが妨げられる。官吏は忠節を保ち、国家に尽くすべきである。
台湾の国学大家・傅佩栄の解釈
時運。苦労が絶えない。危難を避けること。
財運。途中で妨げられ、金銭も財物も失う。
住まい。方角が不利。夫に危難がある恐れ。
身体。過労による災い。

六二の変卦
"周易第39卦的其中之一变卦卦的卦图

六二が変じて、周易の48卦「水風井」となる。この卦は異なる卦(下が巽、上が坎)の重なりである。坎は水、巽は木。木は水を得て盛んに育つ。人は井戸の水で暮らし、井戸は人が掘って作る。互いに養い合い、井戸は水で人を養い、長く尽きない。人はこの徳に倣い、勤勉に自らを励むべきである。

九二爻の哲学的意味

蹇卦第二爻。爻辞は「六二。王の臣は困難を重ねる。自分のためではない」。爻辞の解説。
王:五爻の九五を指す。臣:二爻の六二を指す。蹇蹇(けんけん):蹇難を乗り越えようとする時に、さらに蹇難に遭うこと。人の険阻を助けて渡らせようとしたところ、自分も険阻に遭ったことをいう。匪(ひ):非と同じ。躬(きゅう):自分自身。
この爻辞の意味は、臣下が君主の窮境を救うため、危難の中を奔走するが、それは自分のためではないということである。
卦の象から見ると、六二は陰爻で柔位に居り、中を得て正を守っている。そのため忠実で柔順な性質を備えている。しかし、もともとの資質は明らかに柔弱で、才力も足りない。六二はこの卦の君王である九五と正しく応じており、九五に対してはまさに忠誠心にあふれている。九五が蹇難の中に陥ると、六二は力を尽くして助けようとするが、自ら蹇難を救うだけの条件を備えていない。そのため、助けに出たことで自分も険阻の中に陥ることになる。それでも、これは自分のためではなく、王室を正し救うためだと深く理解している。だからこそ、煮え湯や燃えさかる火の中に身を投じることになっても、決して辞退しない。
『象伝』はこの爻を、「王の臣が困難を重ねるが、最後まで咎はない」と解説する。臣下が君主の窮境を救うため危難の中を奔走しても、結局は責められないということである。
六二には君主を救う力がないが、その品格はなお称賛に値する。私身を守って災いから遠ざかるのではなく、国家のためなら火中水中に入り、難を救うために奔走する。たとえ失敗しても人から責められず、当然、自分を責めることもない。
この爻を得た人は、前進できない時も、手元の仕事を黙々と怠りなく行うこと。指導者や上司が困っていると気づいたら、力の及ぶ限り助けるべきである。能力不足を恐れて尻込みしてはならない。行動しても責められることはない。
六二は中位にあり正を得ているので、中正の徳を備える。六二が応じるのは九五で、九五も中位にある。「臣」として、六二と九五はいずれも中正の徳を持つため、過ちを犯さない。しかし険難は重なっている。この危険はどこから来るのか。卦象では、九五は上卦坎の中央にあり、坎は険と難を表すので、身が険難に陥る意味がある。六二は下互卦坎の下爻なので、こちらも険境にある意味を持つ。しかしこれらの災難は自分の過ちによるものではないため、最後には過失がない。
周易第三十九卦・九三爻の詳しい解説
九三の爻辞
九三。進めば蹇、戻れば反。
『象伝』にいう。進めば蹇、戻れば反。内にある者が喜ぶ。
現代語による説明
九三。外へ出れば困難が重なるが、帰れば顔に笑みが浮かぶ。
『象伝』はいう。外へ出れば困難が重なるが、帰れば顔に笑みが浮かぶ。これは心の底からの喜びである。
北宋の易学者・邵雍の解釈
平。これを得た人は進取を急がないのがよい。妻子に関する喜びがあるかもしれない。高位の官吏は昇進することがある。
台湾の国学大家・傅佩栄の解釈
時運。前進は容易でないので、まず退いて守る。
財運。商品の流通が滞るので、内地へ回して売る。
住まい。団らんの喜び。縁があって再会する。
身体。いっそう養生すること。

九三の変卦
"周易第39卦的其中之一变卦卦的卦图

九三が変じて、周易の8卦「水地比」となる。この卦は異なる卦(下が坤、上が坎)の重なりである。坤は地、坎は水。水は大地に寄り添い、大地は川や海を受け入れ、互いに依存して親密に結びつく。この卦は師卦と完全に反対で、互いに綜卦である。親しみ助け合い、広い心で私心なく、誠を尽くして団結する道理を説く。

九三爻の哲学的な意味

蹇卦第三爻。爻辞は「九三。進めば蹇、戻れば反」。爻辞の解説。
反(はん):返と同じで、「戻る」の意。
この爻辞の意味は、前進すれば災いがあるので、戻って来るということである。
九三の教えは、情勢にはなお転機がなく、進めば危険に入り、戻れば安住の場所を得るということである。
卦象から見ると、九三は陽爻が剛位にあり、進むことも退くこともできる時にある。上六と正しく応じるので、上へ進もうとする心がある。しかし前方は上卦坎で、坎は険を表すため、戻って来る。
『象伝』はこの爻を、「進めば蹇、戻れば反。内にある者が喜ぶ」と解説する。前進すれば災いがあり、戻って来れば、内側の力が必ず自分に寄り添うということである。
九三は下卦の最上位にあり、その下には二つの陰爻がある。九三はその支柱である。蹇難の時には、陰柔の爻は自立できず、九三の力に頼らなければならない。九三は本来上進しようとするが、困難に遭って戻るので、二つの陰爻は当然大いに喜び、喜んでそれに寄り添う。
この爻を得た人は、仕事や事業が険阻に遭い、これ以上発展するのが難しいと分かったなら、家に戻って家族と団らんを楽しむのがよい。
象辞の意味は、進んで危険に遭い、戻って来るということ。内卦の二つの陰爻が、九三の帰還をともに喜ぶことを示している。
九三は下互卦坎の中央にあるので、身が険に陥っている意味を持つ。どうすべきか。険境から出ようとするが、結果はさらに大きな険に遭う。前方が蹇卦の上卦坎だからであり、退くほかない。九二は下卦艮の上爻なので、九三はより大きな危難を前にして止まる。これは、家が次第に貧しくなった男が、家に財をもたらすために出て行かねばならず、ひどい険阻に遭って、貧しい暮らしを続けるため家に戻らざるを得ないようなものだ。しかしその帰還は二人の妻をたいへん喜ばせる。貧しくても、家族が再び一つになれるからである。
周易第三十九卦・九四爻の詳しい解説
六四の爻辞
六四。進めば蹇、戻れば連なる。
『象伝』にいう。進めば蹇、戻れば連なる。正しい位にあり、実を備えているからである。
現代語による説明
六四。外へ出れば歩みは困難だが、帰れば乗る車がある。
『象伝』はいう。外へ出れば歩みは困難だが、帰れば乗る車がある。六四は陰爻が陰位にあり、人の才能が正しく用いられ、徳が名にかなっている姿だからである。
北宋の易学者・邵雍の解釈
凶。これを得た人は、悪い場合、争いや訴訟に遭う。官吏は昇進の機会があり、名声や利益を求めても実りがあり、空虚ではない。
台湾の国学大家・傅佩栄の解釈
時運。同心協力すれば、難関を越えられる。
財運。客が皆やって来るので、当然利益がある。
住まい。隣り合って暮らす。親族の縁がさらに深まる。
身体。長患いが続き、すぐには治らない。

六四の変卦
"周易第39卦的其中之一变卦卦的卦图

六四が変じて、周易の31卦「沢山咸」となる。この卦は異なる卦(下が艮、上が兌)の重なりである。艮は山、沢は水。柔らかな兌が上、剛なる艮が下にあり、水は下へ浸透する。柔が上、剛が下で、互いに感応する。感じれば成就する。

九四爻の哲学的意味

蹇卦第四爻。爻辞は「六四。進めば蹇、戻れば連なる」。爻辞の解説。
連は、連合することを意味する。
この爻辞の意味は、進めば必ず険阻があるが、他の力と連合してこそ危難を救える可能性があるということである。
九三の教えは、蹇難の時には統一戦線を築くべきだということである。
卦象から見ると、六四は陰爻が柔位にあり、自力で険阻を越える力がない。越えるには他の力を結集する方法を考えなければならない。六四は九五と親しく、九三とも陰陽が調和するので、援助を得て危難から抜け出せる。
『象伝』はこう分析する。「進めば蹇、戻れば連なる。位はまさに実なり」。他の力と連合してこそ危難を救えるというのは、この爻の置かれた位置が、そのように行動すべきことを決めているという意味である。
この爻の教えは、三国時代の蜀のやり方に似ている。劉備の死後、蜀は兵と将を失い、魏の大軍にも国境を迫られ、国家存亡の危機にあった。この国難の時、諸葛亮がまず考えたのは統一戦線を築き、東呉との同盟を回復することだった。統一戦線ができたことで魏軍の侵攻を食い止め、諸葛亮は後顧の憂いなく南征し、孟獲を七度捕らえ、北伐して中原を目指し、祁山へ六度出兵し、一連の勝利を収めた。
この爻を得た人は、前進が阻まれたなら、友人に連絡して親交を深めるか、誠実な態度で友をつくり、助けを求めるとよい。それによって危難を脱し、今後の事業の基盤もより安定する。
周易第三十九卦・九五爻の詳しい解説
九五の爻辞
九五。大いなる蹇に、友が来る。
『象伝』にいう。大いなる蹇に友が来るのは、中正の節度を守るからである。
現代語による説明
九五。大きな困難と苦労を経た後、ついには大きな利益を得る。
『象伝』はいう。大難に臨んで友人の助けを得るのは、九五が上卦の中位にあり、人が節操正しくあれば自然に救いを得る姿だからである。
北宋の易学者・邵雍の解釈
吉。これを得た人は、貴人に引き立てられ、行く先々で不利がない。
台湾の国学大家・傅佩栄の解釈
時運。危機を安全に転じ、別の発展の道を図る。
財運。商品が多すぎて、売りさばきにくい。
住まい。家にとどまるのはよくない。
身体。複数の医師に診てもらって、ようやく治る。

九五の変卦
"周易第39卦的其中之一变卦卦的卦图

九五が変じて、周易の15卦「地山謙」となる。この卦は異なる卦(下が艮、上が坤)の重なりである。艮は山、坤は地。地上に山があり、地は低く山は高い。内面は高く、外面は低く、功績が高くても自ら誇らず、名声が高くても自ら称賛せず、地位が高くても驕らない。これが謙である。

九五爻の哲学的意味

蹇卦第五爻。爻辞は「九五。大いなる蹇に、友が来る」。爻辞の解説。
朋(ほう):友人や仲間、志を同じくする者。
この爻辞の意味は、状況が極めて困難でも、志を同じくする人々が来て危難を越えるのを助けるということである。
九五は陽爻が剛位にあり、蹇卦の上体である坎の中位、つまり蹇難の深みにいるので「大いなる蹇」と呼ぶ。この時、六二のような臣下が忠誠を尽くして難を救おうと奔走する。
『象伝』は次のように説く。「大いなる蹇難には友が来る」とは、中正の節を守るからである。ここでは、境遇が極めて困難でも、志を同じくする者が助けに来て危難を乗り越えられることを示している。正しい道を守り、行動が規範にかなっているため、多くの人が助力に訪れるのである。
卦象から見ると、九五は陽爻で中位にあり、正位を得ている。剛健・中正の徳を備えているため、逆さ吊りのような民の苦しみを救い、難に赴いて蹇難を救おうとする雄志がある。険難の中に陥っても、蹇難を救う節を変えないので、多くの人の助けを得る。
この爻を得た人は、仕事や事業が大きな困難に陥る。しかし、このような時こそ正しい道を固く守り、違法なことや道理に合わない手段を取ってはならない。そうすれば、友人が助けに来てくれる。進むことも退くこともできないほど困窮した時でも、もう少しだけ耐え続ければ、友人が危険な状況から救い出してくれる。
周易第三十九卦・上九爻の詳しい解説
上六の爻辞
上六。進めば蹇難に遭うが、帰れば大きな成果を得る。吉。大人に会うのがよい。
象伝にいう。「進めば蹇難、帰れば大いなる成果」とは、志が内にあるからである。「大人に会うのがよい」とは、尊い者に従うからである。
現代語による説明
上六。外へ出れば困難が重なり、帰れば喜びに跳ねるような心境になる。この爻に当たれば吉で、貴族や諸侯に会うのがよい。
『象伝』にいう。門を出れば困難が重なり、帰れば喜びに跳ね上がる。これは志気が高く、勇んで勝利を得ようとしていることを示す。『爻伝』にいう。貴族や諸侯に会うのがよい。これは貴人に従えば、必ず幸福と利益を得ることを示す。
北宋の易学者・邵雍の解釈
吉。この爻を得た人は幸運が訪れ、計画が思いどおりに進む。官職にある人は要職に就き、学ぶ人は進んで名声を得る。
台湾の国学大家・傅佩栄の解釈
時運。大きな運気がまもなく訪れ、名声も利益も実る。
金運。商品の価格が上がり、元本を守りながら利益を得る。
家庭。貴人の助けがある。結婚は身分の高い相手につながる。
健康。名医の治療を受ける。

上六の変卦
"周易第39卦的其中之一变卦卦的卦图

上六が変じると周易第53卦「風山漸」となる。この卦は異卦で、下が艮、上が巽である。艮は山、巽は木を表す。山の上に木があり、木は次第に成長し、山もそれにつれて高くなる。これは徐々に進歩する過程なので「漸」と呼ばれる。漸とは進むことであり、急がず少しずつ前進することである。

上九爻の哲学的意味

蹇卦第六爻の爻辞。上六。進めば蹇難、帰れば大きな成果を得る。吉。大人に会うのがよい。爻辞の解釈。「大きな成果」とは、豊かで実り多いことをいう。
この爻辞の意味は、前進すれば険阻に遭うが、帰れば豊かな収穫を得るということである。そうすれば吉祥となり、大人物の前に出るのがよい。
上六は柔爻で陰位にあり、しかも卦の極みにいるため、もはや前へ進むことはできない。無理に進めば益がないばかりか、さらに蹇難を生む。帰って九三と結び、九五に従えば、この二つの剛爻の助けによって、蹇難を救う大功を成し遂げられる。だから爻辞は「来たれば碩」と説く。六爻全体の蹇難がすべて解かれるので、「吉」となる。
『象伝』はこの爻を次のように解釈する。「進めば蹇難、帰れば大きな成果」とは、志が内にあるからである。「大人に会うのがよい」とは、尊い者に従うからである。ここで示されるのは、前進に険阻があり帰って豊かな成果を得るためには、まず自分の内側にあるさまざまな力を結集し、共に困難な時代を乗り越えることが肝要だということである。「大人に会うのがよい」とは、尊貴な君主に従って功業を立てるべきことを示す。
この爻を得た人は、前進する際に困難に遭い、事業が行き詰まるかもしれない。その時は、いったん退くのもよい。思いがけない収穫が得られる可能性がある。次には友人と親交を結び、影響力のある大人物に会いに行くとよい。その助けによって難関を抜け出せる。
上六。進めば蹇難、帰れば大きな成果を得る。吉。大人に会うのがよい。
象伝にいう。「進めば蹇難、帰れば大きな成果」とは、志が内にあるからである。「大人に会うのがよい」とは、尊い者に従うからである。
経文の意味は、進めば険阻に遭うが、帰れば大きな功績を得る。吉であり、大人物を訪ねるのがよいということである。
象辞の意味は、進めば険阻に遭い帰れば大きな功績を得るのは、上六が皆と力を合わせる結果だということである。大人物を訪ねるのがよいのは、上六が尊貴な君主に従うことを示す。
上六は険難の極みにある。その危険は山や川の険しさではなく、行き詰まり、進む道がまったくないという危険である。どうすればよいのか。ただ退いて戻り、皆と共に目の前の危難を乗り越えるしかない。上六は九三と応じ、九五とも結びつくため、帰る意思を持つ。戻れば九五と結びつけるので、「大人に会うのがよい」となる。上六の吉は、道がない時に退いて戻れることにある。ある部落で洪水が起きたとしよう。上六は洪水から逃れたものの、前方に水害はなくても進む道がないことに気づく。そのため再び被災地へ戻り、皆と団結して災害に立ち向かう。ことわざに「人が多ければ力も大きく、心が一つなら泰山も動かせる」という。上六が戻ることで災害に抗う力が増すため、当然吉となる。