易経 · 六十四卦

周易・易経・第56卦 旅卦(火山旅、上卦離・下卦艮)

旅:小しく亨る。旅にて正しければ吉。

彖伝にいう:「旅は小しく亨る。柔は外にして中を得、剛に順い、止まって明に麗く。ここを以て小しく亨り、旅にて正しければ吉なり。旅の時義は大なるかな。」

象伝にいう:「山上に火あるは旅なり。君子以て刑を明慎に用い、獄を留めず。」

易経 第 56 卦の本卦・互卦・錯卦・綜卦の図

易経 第 56 卦 原文と概説

周易第五十六卦の詳しい解説
旅卦の原文
旅。小しく亨る。旅にて正しければ吉。
象伝にいう:「山上に火あるは旅なり。君子以て刑を明慎に用い、獄を留めず。」
現代語による説明
旅卦:多少の通達がある。旅行について占えば吉。
『象辞』はいう。上卦は離で火、下卦は艮で山。山上の火が隠れた場所を照らすのが旅卦の象である。君子はこの象を見て、刑獄を明らかに調べ、慎重に判決を下す。刑罰を乱用せず、案件を遅延させたり滞留させたりもしない。
『断易天機』による解説
旅卦は上が離、下が艮で、離宮の初世卦である。旅には客として滞在すること、旅行することの意味があり、初めは楽しんでも後には悲しみ嘆くことになる。
北宋の易学者・邵雍の解釈
旅は困窮し、漂うように定まらない。小さな望みはかなうが、大きな願いは得にくい。
この卦を得た人は、異郷にいるように物事の変化が多い。小事は成るが大事は成りにくいので、常道を慎んで守るのがよい。
台湾の国学大家・傅佩栄の解釈
時運:慎重にして災いを防げば、昇進・登用が間近である。
金運:外へ出て商売するが、商品をため込んではならない。
家庭:火災に注意。その日のうちに結婚する。
身体:肝の火が過剰で、生死にかかわる。
伝統的な卦の解釈
これは異なる二つの卦が重なったもので、下卦は艮、上卦は離である。豊卦とは反対で、互いに「綜卦」の関係にある。山中の火は燃えて止まず、炎が前へ前へと広がるさまは、道中の旅人が急いで進むようである。そこで旅卦と呼ぶ。
大象:火が山野を焼き、火の手が一面に広がる。燃え移った所は一つも無事でなく、火の手は定まる場所のない旅人のようである。
運勢:あらゆることが変化し、定まらない。この時は信念を守り、多くの人の意見を参考にするほかない。そうしなければ必ず凶となる。
仕事:創業・発展の段階にあり、さまざまな困難が多い。中正な方針を守り、正道に従って事を行い、調査を重んじ、どこでも慎重に行動し、状況の変化に応じて対策を講じれば、仕事は順調に前進できる。
商売:市場の動きは旅路のようで、予想外の事態がいつでも起こりうる。まず慎重な原則を採り、危険を冒してはならない。しかし、臆病になって手をこまねいてもならず、とりわけ疑心を抱いてはならない。市場を開拓する前に、十分な調査と研究を行うこと。
名声:時代の要請に応じて知識と能力を豊かにし、絶えず自分を高め、他人の助けを得られるよう努めること。
結婚・恋愛:双方に不確定な要素が多い。確かな愛情があるなら、自然の成り行きに任せ、後で決めればよい。結婚は円満で幸福になる。
決断:人生は変化の多い状態にある。必ず大局的な見通しをもち、大きな志を立て、絶えず自分を充実させること。誠実で謙虚な態度で人に接し、物事を処理し、一時的な得失にこだわらず、広く友人と交わる。人生の旅は非常に順調になる。

第五十六卦の哲学的意味

旅卦の卦象――火山旅の象徴的意味
旅卦は異なる二つの卦が重なったもので、下卦は艮、上卦は離である。艮は山、離は火を表す。山中の火は燃えて止まず、炎が前へ前へと広がるさまは、道中の旅人が急いで進むようである。そこで旅卦と呼ばれる。
旅卦は豊卦の後に置かれる。『序卦伝』はこう説明する。「大を極めた者は必ずその居を失う。ゆえにこれを受けるに旅をもってする。」豊かさを極めても収めることを知らなければ、必ず住まいを離れるので、豊卦の後に旅卦を論じる。『雑卦伝』はいう。「豊は故多く、親寡きは旅なり。」豊卦には旧知の者が多いが、旅卦には親しい人が少ない。この二卦は正反対の関係にある。
『象』は旅卦を次のように解釈する。山上に火があるのが旅である。君子はこれを見て、刑罰を慎重に用い、明らかに裁判を決する。旅卦は下に艮(山)、上に離(火)を配し、火勢が急速に広がる象で、旅人が急いで道を行くことを象徴する。君子はこれに倣い、刑罰を慎重に用い、獄事を明晰に裁くべきである。
旅卦は旅行を象徴し、義に従い時に順応する道理を示す。下下卦に属する。『象』はこの卦を次のように占断する。鳥が木の上に巣を築くのに、小人が計略を用いて火を放つ。君主がこの卦を得れば不吉で、あらゆる望みは徒労に終わる。

易経 第 56 卦 爻ごとの詳解

周易第五十六卦・初九爻の詳しい解説
初六の爻辞
初六。旅人が細々と迷い、これが自ら災いを招く。
象伝にいう:「旅人が細々と迷う」とは、志が窮まり、災いを招くことである。
現代語による説明
初六:旅人は気持ちが定まらず、進退に迷う。最後には宿を離れ、みずから災いを招く。
『象辞』はいう。旅人が気持ちを定められないのは、どこへ行っても壁にぶつかり、精神的に疲れ果てているからである。
北宋の易学者・邵雍の解釈
凶:この爻を得た人は運が悪く、災難に注意しなければならない。官職にある人は才能があっても、上司に重用されない。
台湾の国学大家・傅佩栄の解釈
時運:得るものは限られる。修養に努めるのがよい。
金運:元手が小さく利益も少ない。災いに注意すること。
家庭:慎重にして災いを避ける。小さな家同士の縁組。
身体:病気は初期のうちに治療すること。

初六の変卦
"周易第56卦的其中之一变卦卦的卦图

初六爻が変じると周易の30卦、離為火となる。これは同じ卦が重なり、下卦も上卦も離である。「離」は麗、すなわち付着の意味で、一つの陰爻が上下二つの陽爻に付着している。この卦は火を象徴し、内は空しく外は明るい。離は火と明るさを表し、太陽が昇り沈むことを繰り返し、休むことなく運行する。心の本質は柔順である。
周易第五十六卦・六二爻の詳しい解説
六二の爻辞
六二。旅人は宿に着き、財を携え、童僕を得る。正しきを守る。
象伝にいう:童僕を得て正しければ、ついには咎がない。
現代語による説明
六二:旅人は市場に来て、金銭を携え、男の召使いを買う。占えば吉兆を得る。
『象辞』はいう。男の召使いを買い、占って吉兆を得たのだから、この取引には問題がないようである。
北宋の易学者・邵雍の解釈
吉:この爻を得た人は運が好転し、計画が成就する。官職にある人は顕著な地位を得る。
台湾の国学大家・傅佩栄の解釈
時運:運勢は中正で、名利ともに得られる。
金運:財を生む道があり、旅先でも心配はない。
家庭:身を寄せて暮らしても福がある。富裕な家に婿入りする。
身体:旅の途中で病むが、人に世話をしてもらえる。

六二の変卦
"周易第56卦的其中之一变卦卦的卦图

六二爻が変じると周易の50卦、火風鼎となる。これは異卦で、下卦が巽、上卦が離である。木を燃やして食を煮ることで、生のものを熟したものに変え、古いものを除いて新しいものを打ち立てる意味がある。鼎は貴重で大きな器であり、三本の脚は安定を象徴する。食を煮ることは食物が豊富で、もはや困難や悩みがないことのたとえである。これを基礎として改革を行い、事業を発展させるのがよい。

初九爻の哲学的意味

旅卦の第二爻、爻辞:「六二。旅は次に即き、其の資を懐き、童僕を得る。貞。」爻辞の解釈。
「即」は「就く」という意味。「次」は旅の宿を指す。『左伝』には「軍隊では一泊を舎、二泊を信、信を越えれば次という」とある。もともとは軍隊の行軍と宿営を述べた言葉だが、後に旅人にも用いられるようになった。
この爻辞の意味は、旅人が宿に泊まり、財を携え、童僕に世話をしてもらい、正しい道を守れるということである。
卦象から見ると、六二は陰爻で柔位にあり、中央に位置して正しい位を得ている。
『象伝』はこの爻を次のように解釈する。「童僕を得て、正道を守る」。最後まで咎めを受けることはない。これは、「童僕の世話を受け、正しい道を固く守る」ので、過失がないことを示している。
この爻を得た人は、旅先で非常に順調に進む。懐には十分な金を持っているが、今回の旅では自分で多くの費用を支払う必要はない。
宿に着けば、食事も飲み物もあり、童僕の世話も受けられる。この時は、あなたは
正しい道を守ることに注意しなければならない。好調な状況は長く続かないおそれがあるからだ。
六二。旅人は宿を取り、財貨を携え、さらに従者を得る。正道を守れば吉。
象伝にいう:童僕を得て正しければ、ついには咎がない。
『周易』第五十六卦・九三爻の詳しい解説
九三の爻辞
九三。旅人の宿が焼け、童僕を失う。正道を守っても危うい。
『象伝』にいう。「旅人の宿が焼けた」とは、傷ついたということである。従者を旅の仲間として扱ったので、失うのは当然の道理である。
現代語による説明
九三。旅人は火のついた市に着き、買ったばかりの男の召使いは混乱に乗じて逃げてしまう。占うと危険の兆しが出る。
『象伝』にいう。「旅人が火のついた市に着いた」のだから、損害を受けないはずがない。旅人が童僕を連れて行った以上、混乱に乗じて童僕が逃げるのは当然である。
北宋の易学者・邵雍の解釈
凶。この爻を得た人は、運勢が悪化し、多くの災難や苦労に見舞われる。官職にある人は、職を失う心配がある。
台湾の国学大家・傅佩栄の解釈
時運。運勢が逆転し、危難が少なくない。
財運。利益を求めず、早めに災いに備えること。
家庭。火の用心をすること。夫婦がともに老いるのは難しい。
健康。子どもや童僕を守りきれないおそれがある。

九三の変卦
"周易第56卦的其中之一变卦卦的卦图

九三の陽爻が変じて、周易の第35卦、火地晋となる。この卦は異なる卦、すなわち下が坤、上が離で重なっている。離は太陽と光明を表し、坤は大地を表す。太陽が高く空にかかり、大地をあまねく照らしている。大地はへりくだって受け入れ、万物は成長する。明朗で正しく、柔軟に前進して上へ進むことを表し、事業がますます発展するたとえである。

九三爻の哲学的な意味

旅の卦の三爻、爻辞。九三――旅人の宿が焼け、若い従者を失う。正しくあっても危うい。爻辞の解釈
この爻辞の意味は、旅の途中で泊まっていた宿が火事になり、童僕が逃げてしまい、正道を失えば危険が生じるということである。
卦象から見ると、九三は陽爻で剛位にあり、下卦艮の頂点に位置する。艮は山を表し、九三は山頂にあるため、高慢で自大になり、剛直に過ぎて中道を行えない象がある。九三は上の九四と反発する比の関係にあり、上位者に従わず、主人の機嫌を損ね、土地の主人から追い払われる。頑固で独断的なため上進を阻まれ、さらに怒りを部下に向けたので、童僕が逃げたのである。九三は謙虚で柔順な原則に背いており、このような妨げに遭うのは非常に危険である。
『象伝』にいう。「旅人の宿が焼けた」とは、すでに傷を受けたということである。童僕を道行く他人のように扱えば、童僕が見限って去るのは必然であり、道理にかなっている。
この爻を得た人が外出するなら、必ず謙虚に人と接することを心に留めよ。自分を高くして土地の人を見下したり、他人と争ったりしてはならない。そうでなければ自ら災いを招く。問題が起きた後は、まず自分の欠点を多く探し、部下を一方的に責めてすべて彼らの責任だと思ってはならない。そうすると部下の支持を失う。
環境が混乱しているほど、冷静さを保ち、中道を守らなければならない。不安定な環境で心の安定まで失えば、苦しさは倍増し、身を落ち着ける場所も得にくくなる。
九三。旅人の宿が焼け、童僕を失う。正道を守っても危うい。
『象伝』にいう。「旅人の宿が焼けた」とは、傷ついたということである。従者を旅の仲間として扱ったので、失うのは当然の道理である。
『周易』第五十六卦・九四爻の詳しい解説
九四の爻辞
九四。旅人は滞在する場所にいて、財貨と斧を得るが、心は安らがない。
『象伝』にいう。「旅人がある場所に滞在する」とは、まだふさわしい位置を得ていないことである。「財貨と斧を得る」とは、心がまだ安らいでいないことである。
現代語による説明
九四。旅人は仮住まいに戻る。かなりの金を得たため、心が落ち着かない。
『象伝』にいう。「旅人が仮住まいに戻る」とは、適切な住まいではないということである。かなりの金を得たので、強盗を恐れ、当然ながら心が落ち着かない。
北宋の易学者・邵雍の解釈
凶。この爻を得た人は、外地で成果を上げるが、完全ではなく、心配な争い事やつらい出来事が起こりやすい。商売人は利益を得る。
台湾の国学大家・傅佩栄の解釈
時運。一時的に困難がある。来年まで待つこと。
財運。利益は限られ、心は満たされない。
家庭。立場がふさわしくない。正室の居所ではない。
健康。憂うつで楽しくない。

九四の変卦
"周易第56卦的其中之一变卦卦的卦图

九四が変爻すると、『周易』の52卦、艮為山となる。この卦は同卦で、下も上も艮である。艮は山を表し、二つの山が重なるので静止をたとえる。震卦とは反対である。頂点の後には必ず下降局面が現れ、物事は相対的な静止段階に入る。山のように静止し、止まるべき時は止まり、進むべき時は進む。動くことも静まることも機を失わず、ほどよく行い、適切なところで止めるべきである。

九四爻の哲学的意味

旅の卦の四爻、爻辞。九四――旅人は身を寄せる場所を得て、資金と斧を手にするが、心は安らかでない。爻辞の解釈
「処」は居場所を指す。「資」は財貨を指す。「斧」は鋭い斧を指す。
この爻辞の意味は、異郷に長く住み、金銭の助けや鋭い斧による防備を得ても、気分はなお晴れないということである。
卦象から見ると、九四は陽爻で柔位にあり、位を失っている。九四は互卦の巽(六二・九三・九四)の
にある。巽は利益を得ることを表し、ここでは旅の費用を得ることを指す。また上卦の離の中にあり、離は兵器を表すので斧を得ることができ、「その資斧を得る」となる。程頤は、資斧とは「貨財の資本と、器物の利便」であると指摘している。ここでは、九四が自分の知識と能力によって財を得て、身を立てることもできるという意味である。しかし九四は位を失い、正位でもないため、いつまでも自分を主人ではなく客にすぎないと感じる。大志も遂げられず、そのため心中に不満が絶えない。
『象伝』はこの爻を次のように解釈する。「旅人が滞在する場所にいる」とは、まだ正しい位置を得ていないことである。「財貨と斧を得る」とは、心がまだ晴れないことである。これは、「異郷に長く住む」とは主人ではなく客であることを示す。「金銭の助けや鋭い斧による防備を得ても」、なお他郷に客として住んでいるので、心は依然として伸びやかにならない。
この爻を得た人は、長く故郷を離れてさすらっている。苦労して住まいと生計の問題を解決し、いくらか金も得たが、心には漂泊の感覚があり、楽しめない。そのため感情をうまく整え、「来たからにはここで安んじる」心を持つことだ。
九四。旅人は滞在する場所にいて、財貨と斧を得るが、心は安らがない。
『象伝』にいう。「旅人がある場所に滞在する」とは、まだふさわしい位置を得ていないことである。「財貨と斧を得る」とは、心がまだ安らいでいないことである。
『周易』第五十六卦・六五爻の詳しい解説
六五の爻辞
六五。雉を射て、一矢を失う。最後には誉れと爵命を得る。
『象伝』にいう。「最後には誉れと爵命を得る」とは、その評判が上位者にまで届くことである。
現代語による説明
六五。野雉を射て一矢で命中させ、その人はそれによって善い射手としての名声を広く得る。
『象伝』にいう。ついに射上手としての名声を得たのは、人々が口々にほめたたえ、上位の人にも知られたからである。
北宋の易学者・邵雍の解釈
吉。この爻を得た人は、年長者の助けを得て、事を成し遂げる。
台湾の国学大家・傅佩栄の解釈
時運。晩年の運勢が非常によく、祝うに値する。
財運。小さな損失の後に大きな利益を得、利益も名声もある。
家庭。美しく善い家庭と称えられる。คู่ครองที่ดีเกิดขึ้นโดยชะตาสวรรค์
健康。難に殉じて表彰される。

六五の変卦
"周易第56卦的其中之一变卦卦的卦图

六五が変爻すると、『周易』の33卦、天山遯となる。この卦は異卦で、下が艮、上が乾である。乾は天、艮は山を表す。天下に山があり、山が高く天が退く。陰が伸びて陽が衰え、小人が勢いを得るので、君子は隠退して身を守り、天下を救う機会をうかがう。

九五爻の哲学的意味

旅の卦の五爻、爻辞。六五――雉を射て、矢を一本失う。最後には誉れと任命を受ける。爻辞の解釈
「雉」は野雉を指す。「誉」はよい評判を指す。「命」は任命や爵位の授与を指す。
この爻辞の意味は、野雉を一矢で射落とし、最後には栄誉と爵位を得るということである。
卦象から見ると、六五は陰爻で柔位にあり、君主の位にいて中正を守る。そのため事は順調に進み、大いに吉である。
『象伝』にいう。「最後には誉れと爵命を得る」とは、高い地位にある尊者に近づくことができるからである。
この爻を得た人は、旅の途中で腕を発揮する機会に出会う。弓を射るように目標を見定め、一矢で的中させることだ。そうすれば栄誉と地位は自然にやってくる。
六五。雉を射て、一矢を失う。最後には誉れと爵命を得る。
『象伝』にいう。「最後には誉れと爵命を得る」とは、その評判が上位者にまで届くことである。
『周易』第五十六卦・上九爻の詳しい解説
上九の爻辞
上九。鳥の巣が焼け、旅人は初め笑うが、後には声を上げて泣く。易の地で牛を失う。凶。
『象伝』にいう。「旅人として高位にいる」とは、その道理からして焼けるのである。「易の地で牛を失う」とは、最後まで誰もそのことを聞き知る者がいないということである。
現代語による説明
上九。鳥の巣が焼かれ、周人の邑落が略奪される。各地に流浪する周人よ、よい暮らしはすでに過去となり、目の前には悲惨な現実がある。狄人が牛や羊を連れ去っていく。これからの日々をどう生きればよいのか。
『象伝』にいう。商旅の身で高い爵位に上るのは、分を越えることの極みである。その居所が焼けるのは当然予想される。易の地で牛や羊を略奪されても、いたわり慰めに来る者がいないのは、道理にかなっている。
北宋の易学者・邵雍の解釈
凶。この爻を得た人は、初めはよくても後に悪くなる。災難を避けるため転居や改築をすることがあり、目の病を患うことも、火災に遭うこともある。官職にある人は地位を保てず、先に得て後に失う心配がある。
台湾の国学大家・傅佩栄の解釈
時運。失うばかりで得るものがなく、喜びが極まって悲しみとなる。
財運。小利はあるが損失が大きく、非常に危険。
家庭。巣が覆るような危険。初めは喜び、後には悲しみ。
健康。丑年生まれの人には凶。

上九の変卦
"周易第56卦的其中之一变卦卦的卦图

上九が変爻すると、『周易』の62卦、雷山小過となる。この卦は異卦で、下が艮、上が震である。艮は山、震は雷。山を越えて雷が鳴るので、恐れなければならない。陽は大、陰は小であり、外側の四陰が中央の二陽を越えているため「小過」と呼ぶ。小さく度を越すという意味である。

上九爻の哲学的意味

旅の卦の上爻、爻辞。上九――鳥の巣が焼ける。旅人は初め笑うが、後には悲鳴を上げて遠くを見つめる。国境で牛を失う。凶。爻辞の解釈
この爻辞の意味は、鳥の巣が火事で焼け落ち、外出した人が初めは喜び笑うが、後には声を上げて泣き、境界で牛を失うのは危険だということである。
卦象から見ると、上九は陽爻で陰位にあり、剛強に進みながら位を失っている。また中道を守れず、静止を主張する九三と敵応する。せわしなく進み続け、柔順の徳を失い、時に応じて変通することを知らないので凶となる。
この爻を得た人は、自分の高慢さや自大さによって次々と面倒を招いている。だからこそ、人との接し方や振る舞いに十分注意しなければならない。
上九。鳥がその巣を焼き、旅人は初め笑うが、後には声を上げて泣く。易の地で牛を失う。凶。
『象伝』にいう。「旅人として高位にいる」とは、その道理からして焼けるのである。「易の地で牛を失う」とは、最後まで誰もその損失をともにする者がいないということである。