易経 · 六十四卦

周易・易経 第43卦 夬卦、沢天夬、上卦は兌・下卦は乾

夬は、王庭で明らかにする。誠実に声を上げれば危険がある。自分の邑に告げる。武力に訴えるのはよくない。進むべきところがあるのはよい。

彖伝にいう。夬とは決断であり、剛が柔を決することである。健やかで喜びがあり、決断しても和を保つ。「王庭で明らかにする」とは、柔が五つの剛に乗っているからである。「誠実に声を上げれば危険がある」とは、その危険が明らかになることをいう。「自分の邑に告げ、武力に訴えるのはよくない」とは、尊ぶものが窮まることをいう。「進むべきところがあるのはよい」とは、剛が盛んになって終局に至ることをいう。

象伝にいう。天の上に沢があるのが夬である。君子はこれを見て、恩徳を下々に施し、功徳の上に安住することを戒める。

易経 第 43 卦の本卦・互卦・錯卦・綜卦の図

易経 第 43 卦 原文と概説

周易第四十三卦詳解
夬卦原文
夬。王庭で明らかにする。誠実に声を上げれば危険がある。自分の邑に告げる。武力に訴えるのはよくない。進むべきところがあるのはよい。
象伝にいう。天の上に沢があるのが夬である。君子はこれを見て、恩徳を下々に施し、功徳の上に安住することを戒める。
現代語による説明
夬は、王庭で舞い歌い、楽しんでいる。ある者が「敵が攻めて来た」と叫び知らせる。邑から命令が伝わる。「攻撃に出るのはよくない。厳重に備えて待て」。この爻を占って得たなら、外へ旅行するのは吉である。
『象辞』にいう。この卦は上卦が兌で、兌は沢を表し、下卦が乾で、乾は天を表す。沢の水が上昇して大地を潤す姿が、夬の卦象である。君子はこの象を見て、恵みを下々に施し、功を自分のものとして誇ることを避け、それを戒めとする。
『断易天機』による解説
夬卦は上が兌、下が乾で、坤宮の五世卦である。この卦の夬は決断・決裂を意味し、危険な事が起こることを象徴する。「進むべきところがあるのはよい」とは、前進すれば有利ということである。
北宋の易学者・邵雍の解釈
排除して断ち切るには、剛毅に決断しなければならない。初めは吉でも終わりは凶となるので、慎重に自分を律すること。
この卦を得た人は、大きな運気が過ぎようとしており、困難が近づいている。警戒を強め、言葉と行動を慎むべきである。
台湾の国学大家・傅佩栄の解釈
時運:運気が盛んすぎる。財を分け与えると吉。
財運:自他ともに利益を得る。財を分ければ人が集まる。
住まい:水害に注意。縁談はまとまらない。
身体:気息を調え、養生する。
伝統的な卦の解釈
この卦は異なる卦を重ねたもので、下卦が乾、上卦が兌である。乾は天・健を表し、兌は沢・悦を表す。沢の気が上昇して雨となって降り、大地に施されて万物を潤す。五つの陽爻が一つの陰爻を取り除くので、取り除くことは難しくなく、決断すればよい。そこで夬と名づけられ、夬は決を意味する。
大象:沢の水が満ちて氾濫し、天まで届く勢いで災害となる。また、盛んな五つの陽爻は必ず唯一の陰爻を除くので、一陰は孤立する。
運勢:今は吉であっても、困難や変動がすでに芽生えている。警戒を強め、傲慢を慎み、口論や言葉の災いに注意すること。
事業:発展の盛んな段階にあるが、すでに広範な危険の種が育っている。必ず恩恵を人々に施し、功を誇っておごり高ぶってはならない。自ら進んで人々と力を合わせ、危険なことには手を出さないこと。常に警戒を怠らず、つまらぬ者の妨害を防ぐ。ただし、向こう見ずになってはならず、穏当な手段でつまらぬ者を断固として処理し、行き過ぎを避けるべきである。
商売:市場は衰退へ向かっているので、大規模な活動は控え、いつでも方向転換できるようにすること。新分野を開拓するときは他人との協力を強める。ただし、下心のある狡猾な小人が機に乗じて騒ぎを起こし、破壊することには十分注意する。
名声を求める:謙虚に教えを求め、自分の実力を充実させる。ただし身のほどをわきまえ、盲目的にうぬぼれてはならない。まして小人と結託して虚名を求め、仕事を損なってはならない。
結婚・恋愛:紹介者にだまされないようにし、相手の目的にも注意する。
決断:性格に矛盾があり、外見は強そうでも内心は弱いことが多い。そのため、肝心な時に事業を台なしにする。他人の忠告を謙虚に聞き、決して軽率に動かず、よく計画して深く考え、柔和な態度で人に接し、物事に対処すること。

第四十三卦の哲学的意味

夬卦の卦象、沢天夬の象徴的意味
夬卦は異なる卦を重ねたもので、下卦が乾、上卦が兌である。乾は天・健を表し、兌は沢・悦を表す。沢の気が上昇して雨となり、雨が大地に降り注いで万物を潤す。「五つの陽爻が一つの陰爻を取り除く。取り除くのは難しくなく、決断すればよい。だから夬と名づけられ、夬は決を意味する」。
夬卦は益卦の後に位置する。『序卦伝』にいう。「益してやまざれば必ず決す。故にこれを受くるに夬をもってす。夬とは決なり」。つまり、増益を際限なく続ければ、最後には必ず決壊するということである。
『象伝』はこの卦を次のように説明する。「天の上に沢があるのが夬である。君子はこれを見て、恩徳を下々に施し、徳に安住することを戒める」。夬の卦象は、乾(天)が下、兌(沢)が上で、湖水が天へ蒸発し、やがて雨となって降り注ごうとする姿であり、これが決断を象徴している。君子はここから悟るべきである。下層の人々に自覚的に広く恩徳を施さなければならない。高い所に居座って恩恵を施さなければ、恨みを買うことになる。
夬卦は決断を象徴し、最上吉の卦に属する。象にいう。蜘蛛が天軍と競うように巣から逃れようとし、飛び回る蜂は翅の毛を巣に絡め取られる。幸いにも大風が巣を吹き破り、災難を脱して再び悠々と過ごせる。

易経 第 43 卦 爻ごとの詳解

周易第四十三卦初九爻詳解
初九の爻辞
初九。前の足先が強く盛んである。進んでも勝てず、咎となる。
象伝にいう。勝てないのに進むのが咎である。
現代語による説明
初九。足の指を傷めているのに、それでも進み続けるので、足の力が及ばず災いを招く。
『象辞』にいう。足の力が及ばないのに進み続ければ、災いに遭う。
北宋の易学者・邵雍の解釈
凶:この爻を得た人には思いがけない災難があるので、静かに守りを固めるのがよい。官職にある者は、焦って動くと害を受ける。
台湾の国学大家・傅佩栄の解釈
時運:焦って進めば敗れ、動くたびに咎を招く。
財運:勝手に商売をすれば財を損ない、自分を害する。
住まい:土地が低すぎる。門戸が合わない。
身体:足の病気に注意する。

初九の変卦


初九が動くと、周易第28卦の大過、沢風大過となる。この卦は異卦を重ねたもので、下卦が巽、上卦が兌である。兌は沢・悦、巽は木・順を表す。沢の水が舟を沈め、ついには大きな過ちとなる。陰陽の爻が反対になり、陽は大きく陰は小さい。行動が並外れて激しく、過度な象であり、内は剛、外は柔である。

初九爻の哲学的意味

夬卦初爻の爻辞。初九。前の足先が強く盛んである。進んでも勝てず、咎となる。爻辞の解釈
壮:剛健で、性急に進むこと。趾:足の指。前趾:歩み始める時を指す。
この爻辞の意味は、足先だけが勢い盛んで、軽率に進めば勝てず、かえって災いを招くということである。
卦象から見ると、初九は陽爻が剛位にあり、動きたがって軽率に進みやすい。しかし上には四つの陽爻があり、実際には力を発揮する余地がない。また初九と九四には応がなく、功なく引き返し、さらに面倒を招くことを示す。
『象伝』はこの爻を次のように説明する。「勝てないのに進むのが咎である」。初九は最も低い地位にあるため、本来は力を蓄えて機会を待つべきなのに、軽率かつ焦って進もうとする。単独で深く入り込めば失敗するしかない。小人を制裁する使命を果たせないだけでなく、自身にも災いを招く。
この爻を占って得た人は、必勝の確信がなければ事を起こしてはならない。そうしなければ成し遂げられないばかりか、かえって面倒を招く。また、物事を行うときは頭を使うことが大切である。体が丈夫で気性が激しい人の中には、頭脳ではなく腕力で事を進める者がいる。一時の衝動で、自分の能力を総合的に測らず、事情の実態も考えず、熱意と勇気だけで行動すれば、結果はしばしば面倒を招く。
初九。前の足先が強く盛んである。進んでも任に堪えず、悔いを招く。
象伝にいう。勝てないのに進むのが咎である。
経文の意味は、前の足指は丈夫でも、進んで任に堪えられなければ災いを招くということである。
象辞の意味は、任に堪えないのに進むのは、自ら災いを招くことだということである。
初九は陽気が次第に生じることを表す。人体にたとえれば足の指に当たり、人の能力にたとえればまだ弱い段階を示すので、進めば任に堪えない恐れがある。学校で学んでいる大学生にたとえるなら、品行も成績も優れていても、それだけで企業の主要な指導職を担おうとするのは、明らかにまだ力不足である。
周易第四十三卦九二爻詳解
九二の爻辞
九二。恐れて声を上げる。暮夜に武力沙汰があるが、憂えるな。
象伝にいう。武力沙汰があっても憂えるな。それは中道を得ているからである。
現代語による説明
九二。恐れおののいて叫ぶ。夜に敵が攻めて来るが、憂うるほどではない。
『象辞』にいう。敵が攻めて来ても、憂うるほどではない。九二は下卦の中央に位置し、人が中正の道を得ているようだからである。
北宋の易学者・邵雍の解釈
凶。この爻を得た人は、憂いと危険が多く、盗難に十分注意すること。役人は兵権を掌握することがある。
台湾の国学大家・傅佩栄の解釈
時運:何事にも慎重であれば、憂いはない。
財運:商品に保険をかけてこそ、憂いがなくなる。
住まい:火災に注意。結婚は吉。
身体:陰虚で火が盛んである。養生すれば治る。

九二の変卦
"周易第43卦的其中之一变卦卦的卦图

九二が動くと、周易第49卦の革、沢火革となる。この卦は異卦を重ねたもので、下卦が離、上卦が兌である。離は火、兌は沢であり、沢の内には水がある。水は上から下へ注ぎ、火は下から上へ燃え上がる。火が盛んなら水は乾き、水が盛んなら火は消える。両者は生じ合わせると同時に克し合うため、必ず変革が起こる。変革は宇宙の基本法則である。

九二爻の哲学的意味

夬卦第二爻の爻辞。九二。恐れて声を上げる。暮夜に武力沙汰があるが、憂えるな。爻辞の解釈
莫:暮と同じで、夕暮れ時を指す。戎:戦事を指す。恤:憂慮を指す。
この爻辞の意味は、恐れて叫ぶのは深夜に戦事が起こったためだが、危険はなく、心配する必要もないということである。
卦象から見ると、九二は陽爻が柔位にあり、陽剛の気がやや減じている。また中央に位置して中道に従うので、軽率に進まず、過分なこともしない。危険に遭っても、結果は「憂えるな」となる。
『象伝』はこの爻を次のように説明する。「武力沙汰があっても憂えるな」とは、中道を得ているからである。ここで示されるのは、「恐れて叫ぶのは深夜に戦事が起こったためだが、危険はなく、心配する必要もない」ということだ。九二は下卦の中央にあり、中庸の道を守れるからである。小人に悩まされたり危険に遭ったりしても、結局は驚きはあっても害はなく、危険を安全へと変えられる。
この爻を占って得た人は、常に警戒を保ち、災いを未然に防ぐべきである。小人がいるため、注意していない時に生活上の思いがけない事態が起こる可能性がある。だから警戒と備えを保つこと。それは中庸の道にかなっており、大いに有利である。
九二。恐れて声を上げる。暮夜に武力沙汰があるが、憂えるな。
象伝にいう。武力沙汰があっても憂えるな。それは中道を得ているからである。
経文の意味は、驚いて声を上げるが、夜に兵士が通り過ぎても心配する必要はないということである。
象辞の意味は、夜に兵士が通り過ぎても、九二は中正の道にあるので心配する必要はないということである。
九二は警戒心を持ち、ほどよい原則を守っているので、たとえ夜に兵士が通り過ぎても心配する必要はない。俗にいう「平生やましいことをしなければ、真夜中に戸を叩かれても驚かない」に似ている。ただし爻辞を見ると、九二は兵士が通ることでやはり驚いている。それこそが、九二が物事に慎重に対処していることを示す。慎重に中道を守るので、災いはない。
周易第四十三卦九三爻詳解
九三の爻辞
九三。頬骨が強く張る。凶がある。君子は決然として、独りで行けば雨に遭う。濡れて不快になっても、咎はない。
象伝にいう。君子が決然としていれば、最後には咎がない。
現代語による説明
九三。頬骨を傷める。これは凶兆である。君子が急いで独り道を行き、雨に遭って全身濡れ、不快に感じても、災いはない。
『象辞』にいう。君子が急いで独り歩いても、最後には災いがない。
北宋の易学者・邵雍の解釈
凶。この爻を得た人は、争いや訴訟の心配がある。品行正しい人には憂いがなく、初めは困難でも最後には安楽を得る。役人は奸臣を除けず、逆に食い返されることがある。
台湾の国学大家・傅佩栄の解釈
時運:勝手に独行すれば、人に疑われる。
財運:独りで経営すると、より時間がかかる。
住まい:早めに修繕すること。当分はまとまらない。
身体:湿気が上昇している。治療すれば治る。

九三の変卦
"周易第43卦的其中之一变卦卦的卦图

九三が動くと、周易第58卦の兌為沢となる。この卦は同じ卦を重ねたもので、下も沢、上も沢である。兌は水を表す。二つの沢がつながって水を交わし、上下が和し、団結して助け合い、喜びに満ちる。兌は悦でもある。剛健の徳を同じくし、外には柔和な姿を備え、正道を固く歩み、民を上へ導く。

九三爻の哲学的な意味

夬卦第三爻の爻辞。九三。頬骨が強く張る。凶がある。君子は決然として独りで行き、雨に遭って濡れ、不快になるが、咎はない。
夬卦第三爻の爻辞。九三。頬骨が強く張る。凶がある。君子は決然として独りで行き、雨に遭って濡れ、不快になるが、咎はない。人生への示唆
卦象から見ると、九三は陽爻が陽位にあり、正位を得て、陽剛の気が十分である。剛猛な外見が明らかで、決断的・衝動的な性質もあるため、独りで進む。しかし上には互卦の乾(九三・九四・九五)があり、九三は必ずしも力を発揮できないので凶となる。とはいえ、受け入れがたい事に遭い、独りで処理しに行くなら、非常に腹を立てても災いはない。
『象伝』はこの爻を次のように分析する。「君子は決然としている」ので、最後には咎がない。君子が果敢に決断し、毅然として独りで進めば、目立たずに小人と渡り合い、相手を警戒させて思わぬ事態を招くのを避けられる。また感情的なもつれを断ち切り、優柔不断を避けられるので、災いに遭わない。
この爻を占って得た人は、話し方や行動に注意し、より柔軟で穏当な方法を取ること。言葉をあまり強くして、人にぶつからないようにする。耐えられない事に出会ったら、すぐ解決すると決意すべきだが、解決に当たっては慎重であること。特に腹が立つかもしれないが、最後には解決できる。
九三。頬骨が強く張る。凶がある。君子は決然として独りで行き、雨に遭って濡れ、不快になるが、咎はない。
象伝にいう。君子が決然としていれば、最後には咎がない。
経文の意味は、頬骨が強く張って凶険がある。君子が一人で急いで歩き、雨に濡れて不満を抱いても、災いはないということである。
象辞の意味は、君子が急いで歩いても、最後には災いがないということである。
周易第四十三卦九四爻詳解
九四の爻辞
九四。臀に皮膚がない。その歩みはよろめき進まない。羊を引けば悔いは消えるが、その言葉を聞いても信じない。
象伝にいう。その歩みがよろめくのは、位がふさわしくないからである。言葉を聞いても信じないのは、耳は聞こえても道理を明らかに理解していないからである。
現代語による説明
九四。臀を傷め、歩くとよろめく。羊を引いて道に出れば、羊を失ったことを悔やむ。人の忠告を信じなかったためである。
『象辞』にいう。歩みが困難なのは、九四が陽爻でありながら陰位にいるためで、人が不利な境遇にあるようなものだ。人の忠告を信じないのは、耳は正常でも道理をわきまえていないことを示す。
北宋の易学者・邵雍の解釈
凶。この爻を得た人は心が定まらず、計画が成し遂げられない。役人は意欲があっても力が足りず、昇進が難しい。
台湾の国学大家・傅佩栄の解釈
時運:心が定まらなければ、計画は成し遂げにくい。
財運:機会を逃し、利益を得られない。
住まい:周囲が狭い。時間をかければ成就する。
身体:皮膚の病気。聴力低下に注意する。

九四の変卦
"周易第43卦的其中之一变卦卦的卦图

九四が動くと、周易第5卦の需、水天需となる。この卦は異卦を重ねたもので、下卦が乾、上卦が坎である。下卦の乾は剛健、上卦の坎は険難を表す。剛健さで険難に遭うときは、安定して適切に進み、軽率に動いてはならない。時を見て変化を待てば、進む先は必ず成就する。

九四爻の哲学的意味

夬卦第四爻の爻辞。九四。臀に皮膚がない。その歩みはよろめき進まない。羊を引けば悔いは消えるが、その言葉を聞いても信じない。爻辞の解釈
次且:よろめくこと。歩行が不安定な様子を指す。
この爻辞の意味は、尻の皮が擦りむけ、歩くのがとても難しいということだ。羊をしっかり引いて歩けば後悔することはないのに、残念ながらこの話を聞いた者は信じない。
『象伝』はこの爻を次のように分析する。「その歩みがよろめく」のは位がふさわしくないからであり、「言葉を聞いても信じない」のは耳が明らかでないからである。尻を擦りむき、歩くのが難しいのは、立場を誤り、至る所で君主に抑えられているためで、尻の皮が擦りむけたようなものだ。「この話を聞いた者が信じない」のは、苦しい境遇にありながら、力のある剛健な君子の助けを借りるよう勧められても聞き入れず、耳は正常でも判断が明らかでないことを示す。
この爻を得た人は、物事を行うとき、他人の忠告によく耳を傾けること。自分と性格の異なる人と協力すれば、互いに補い合い、自分の不足を補える。
この爻を得た人は、今ある事について落ち着かず不安に感じているかもしれないが、まもなく良い知らせが届く。ここで聞いたことを信じなければ、良い機会を失うことになる。
周易第四十三卦九五爻詳解
九五の爻辞
九五。野羊が決然と跳ねる。中道を行えば咎はない。
象伝にいう。中道を行えば咎はない。しかし中道がまだ広く明らかになっていない。
現代語による説明
九五。小さな角の山羊が道の中央で跳ね回る。この爻を占って得れば災いはない。
『象辞』にいう。中正の道を行えば、ただ災いがないというだけである。おそらく中道を広く実行していないからである。
北宋の易学者・邵雍の解釈
平。この爻を得た人は、計画が思い通りに進み、訴える者は正しさを認められ、病人は回復する。役人は奸邪な者の害に注意すること。
台湾の国学大家・傅佩栄の解釈
時運:君子に親しめば、万事吉。
財運:できるだけ早く手放さなければ、後悔する。
住まい:きれいに整理する。結婚は適している。
身体:旺盛な気を調える。

九五の変卦
"周易第43卦的其中之一变卦卦的卦图

九五が動くと、周易第34卦の大壮、雷天大壮となる。この卦は異卦を重ねたもので、下卦が乾、上卦が震である。震は雷、乾は天を表す。乾の剛と震の動きで、天に雷が鳴り、雲と雷が轟き、声勢は大きく、陽気は盛んで万物が成長する。剛壮で力があるので壮といい、大きくかつ壮んなので大壮という。四つの陽爻が盛んで、積極的に事を成す。上も正しく下も正しいので、基準は正しく影もまっすぐである。

九五爻の哲学的意味

夬卦第五爻の爻辞。九五。野羊が決然と跳ねる。中道を行えば咎はない。
卦象から見ると、九五は陽爻が剛位にあり、君主の位を占め、地位も権力も高い。剛を使いすぎれば一定の勝利は得られても、行動が極端になって反対側へ向かい、敵対勢力を根絶するのは難しくなる。幸い九五は上卦の中央にあり、上六とも親しく接しているので、剛健さと中道を行う徳を兼ね備える。敵対勢力に対して恩威をともに施すため、災いがない。
『象伝』はこの爻を次のように説明する。「中道を行えば咎はない」とは、中道がまだ光り輝いていないからである。行動では中庸の道を奉じれば、面倒を減らせるということだ。尊い地位にあり、小人の乱れを簡単に解決できるとしても、やり過ぎてはならず、ほどよく行ってこそ災いを避けられる。また、正道を守る行為がまだ大きく光彩を放つまでには至らず、ただ禍を免れる役割を果たすだけだとも示している。
この爻を得た人は、仕事や生活で障害や小人に出会っているかもしれない。冷静に対処し、極端に走らないこと。自分の能力が高く、権力や勢力があっても、できる限り中庸の道を取るほうがよく、それが自分の利益になる。すでに偏った軽率な行為をしたなら、立ち止まって真剣に自分を反省すべきである。
自分自身を反省する。
周易第四十三卦上六爻詳解
上六の爻辞
上六。声を上げることがない。最後には凶がある。
象伝にいう。声を上げないことの凶は、最後まで長く続けられないことをいう。
現代語による説明
上六。犬が泣き叫ぶ。最後には凶事が起こる兆しである。
『象辞』にいう。国に号令がなければ、その勢いは必ず凶に遭う。国運が衰え、最後には保てないことを示している。
北宋の易学者・邵雍の解釈
凶。この爻を得た人は計画が成らず、常道を守るのがよい。品行の悪い者は骨肉の争いに遭い、是非に巻き込まれる。役人は長く任にとどまりにくく、流れが激しくなる前に退くのがよい。
台湾の国学大家・傅佩栄の解釈
時運:名声が大きく損なわれる。警戒すれば災いを免れる。
財運:新しい契約を結び直さなければ、利益はない。
住まい:静かだが落ち着かない。縁談はまだ成立しない。
身体:声を上げて呼ぶこともできず、すでに危地に至っている。

上六の変卦
"周易第43卦的其中之一变卦卦的卦图

上六が動くと、周易第1卦の乾為天となる。この卦は同じ卦を重ね、下も乾、上も乾である。天を象徴し、たとえて龍、すなわち徳と才を備えた君子を表す。また純粋な陽と健を象徴し、隆盛と強健を示す。乾卦は万物が変化し融通する道理に基づき、「元・亨・利・貞」を卦辞とする。吉祥が意のままになることを表し、人に天道の徳を守るよう教える。

上九爻の哲学的意味

夬卦第六爻の爻辞。上六。声を上げることがない。最後には凶がある。
卦象から見ると、上六は卦の頂点にある。陰爻が柔位にあり、資質は弱く、心には陰険さを抱え、行動も明朗正大ではない。上六は陰で陽に乗り、下では九三と応じ、九五の周囲に対立を作って団結を損なう。陽が増して陰が消える時、上六は滅亡寸前の境地にあり、非常に危険である。
『象伝』はこの爻を次のように説明する。「夜に泣き叫ぶことの凶は、ついには長く続かない」。これは、「声を上げて泣きわめいても無益で、最後には必ず危険が身に及ぶ」ことを示している。上六の陰柔な小人が、陽剛の君子、とりわけ君主の上に立っているため、万人の攻撃の的となっているのである。この道理に逆らい秩序を乱す状態は長く続かず、最後には処罰される運命から逃れにくい。
この爻を得た人は、正道を歩まず不正な手段を取り、人との交際でも誠実に接せず、徒党を組み、離間を図っているかもしれない。そのため最後には友人に見捨てられ、何をしてもうまくいかず、失望する結果となる。
この爻を得た人は、第一線を退いた人物で、かつての尊い地位を失い、部下の支持も命令を発する権力もないのに、それを受け入れられず、しばしば騒ぎを起こし破壊する。その結果、最後には凶事が起こる。
大勢はすでに去り、上六の滅亡は避けられない。人は最も悲しい時、かえって涙も出なくなる。上六はまさにその状態である。凶険の到来を待つしかなく、どうすることもできない。多くの陽爻の勢力があまりに強く、対抗できないからである。